著者 小川洋子

語り手の女子大生はごく普通にみえるのに、その伯父さんと彼のロシア人の妻、そして彼女のボーイフレンドはかなり風変わりな人たちだ。父親もあまり聞かない死に方をしている。あんまり変わった設定だと、感情移入できなくてかえってつまらなくなるのに、これは面白かった。作者の筆がうまいから、とあちこちの書評に書いてあるが、そのとおりかもしれない。

ロシア人の伯母さんは美しい青い目をしている。もう相当な高齢なのでその描写はリアルで厳しい。それだけに青い目の美しさと神秘さが浮き立つのかもしれない。そして、彼女がロマノフ王家の末裔アナスタシア皇女かどうか、という謎を絡めたお話に引き込まれる。

ロシア皇帝の四女アナスタシアは生存説があちこちに流布していて実際に偽物も出現したらしい。映画にもなっている。こういうミステリーは大好物だ。だから、読めたんだな。

たぶん違うだろうけど、そうである可能性はゼロではない、というあいまいさに引き込まれる。おとなしくて刺繍だけが好きな異国の伯母さんが王家の末裔かもしれない、なんて素敵じゃないか。

読後感がとってもいいのもこの小説のいいところ。引き込まれたのは伯母さんがアナスタシアかどうか、というミステリー性だけど、それだけではなくて、やさしいけど問題のあるボーイフレンドや伯母さんに取り入る不審な人物など、これからどうなるの、というドキドキ感もよかった。

「蘇生」の意味はよく分からない。アナスタシア皇女かもしれないと世間にもてはやされることで伯母さんが生きがいを得たということか…。

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