腰痛物語⑦

ジムに通うようになってしばらくしてから、マシンを使って筋トレをするようになった。ダンスレッスンを毎日受けているうちに足が痛くなり、トレーニングが必要だとジムの従業員に言われたからだ。

ジムにはいろいろなマシンがあって、初心者には何が自分に必要なのかわからない。筋トレなんかしたことがなかったので、そこら辺にいるトレーナーのような顔をした従業員に聞くしかない。

これが間違いだった。ジムなんか初めて通うのでジムのユニホームを着ているのが全員トレーナーだと思っていたのだがとんでもない間違いだった。今でこそ運動指導士とか、パーソナルトレーナーとかが一般的になってきているが、ただのアルバイトが簡単な講習を受けて立っているだけの場合もある。腰痛があると言えば腹筋が足りませんねと何にも知らないくせにしたり顔でいう輩もいるのだ。

しかしまあ、筋肉なんて、自分にあるのだろうか?くらいに認識のなかった自分には、初めて負荷をかける運動はよかった面もある。少し肩に負荷をかけた運動をしただけで腕が上げやすくなったり、ひざ周りの運動でひざの痛みが和らぐこともあった。根本的な解決にはならないのだが、筋トレは効く!と思ってしまったので妙に凝り性の私は結構頑張ってしまった。腰痛が治らないのは頑張りが足りないせいだと思ってさらに回数や負荷をあげたりした。トレーナーの顔をしたアルバイトも頑張るあなたを応援しますとばかり、いろんなマシンの使い方を教えてくれたりしたのだが、ある日、猛烈に骨盤のあたりが痛くなった。

ゆがんだ姿勢のままで負荷のあるトレーニングをしたせいで、とうとう骨盤が悲鳴を上げたのだ。何か初めてのことをするときは、ちゃんとした経験者が絶対に必要だ。

このままではいけないと思い、ジムで知り合った競技エアロをしている女性にどんな風に体調を維持しているのか聞いてみると、筋トレ専門のトレーナーに指導してもらっているという。腰痛が耐えがたくなってきていた私はさっそくそのトレーナーを紹介してもらった。

ビルの1室がトレーニングスタジオになっている。30代半ばのそのトレーナーは典型的な逆三角形のスポーツマンだ。立っている姿勢や簡単な動作チェックをしてもらった結果は散々なものだった。姿勢は悪いし、筋肉のバランスも良くない。体の使い方は間違っているし、今行っているマシンでのトレーニングは一切辞めるようにとのこと。そして、さっそくトレーニングの指導をしてもらったのだが、そのきついことと言ったら、それまであんまりスポーツをしてこなかった私にとって、他に比較のしようがないくらいきついものだった。

トレーニングの後は汗みずくでへとへとだ。しかし何となく骨盤のあたりが締まったような感じがする。一番の実感はエアロビクスをした際の感覚が全く違うことだ。足が上げやすく、ターンをしても体のふらつきが少なくなった。俄然、楽しさも倍増。少し遠いスタジオだったがしばらく通い続けた。費用はそれなりにかかるが悪くなかったと思う。エアロのインストラクターの一人から、腹筋が強くなったのでは、と言われたのが本当にうれしかった。前述したように運動経験がほとんどないから、インストラクターの目に留まるくらいひどい動きだったのが、ましになったのだ。伸びしろがたくさんあったということだな。一番肝心なのは私自身がより楽しくエアロを行えるようになったということだ。

ジムのダンスレッスンをする人で筋トレにも励む人はあんまりいない。競技エアロをするなどどいう人はともかく、フツーのおばちゃんが筋トレなんかしていても変わり者としか見られない。むしろ、「足や腕が太くなるよ」と人の頑張りをけなすような人までいる。でも、エアロをしている感覚が変わってきたのは自分にしかわからないし、それがすべてだ。これは、イケル、と思ったのだが、あれこれ試しているうちに腰痛が酷くなってきた。エアロは楽にできるのに、どうしてだろう?しかも、小康状態を保っていたひざまで痛みが増してきた。

そんな時、今度はかなり年上のエアロ仲間から、今のトレーニングジムを紹介された。前述したようにその方はご自身の娘さんからのアドバイスをうけ、そのジムに通い始めたのだ。

そこでは、体の測定はもちろん、立ったり座ったりの動きの記録も詳細に記録する。前のトレーナーは見てくれるけど、数字で残したりはせず、目測だけだ。ここでは数か月おきに同じ測定を行い、どのように変化したのかもチェックしてくれる。

やはり、私の筋肉は左右差が著しく大きく、姿勢もよくない。よほどつらい筋トレを課されるのだろうなと思っていたら、そうでもなかった。むしろこれに何の効果があるのかな、と疑問に思うような動作から始まる。でもそれが結構大切なことなんだなとわかってきた。

担当は、若い女性のトレーナーだ。でもちゃんとした有資格者だ。前のジムにいたトレーナーの顔をしたアルバイトとは違う。また、話しやすいという点で前の男性のトレーナーよりも私にはよかったと思う。専門用語をやたらと出すこともせず、わかりやすい普通の言葉で説明してくれる。娘とおしゃべりしているように楽しい。

今のジムに通い始めて1年と少しになるが、筋力と柔軟性に左右差のあったのが、減ってきた。猫背が少しマシになった。しかし、まだまだ股関節は固いし、足首の緩さは手の施しようがない。これから高齢になっていくにしたがって筋力の維持がますます重要だ。老化のスピードとトレーニングの成果との競争だが、こうしてジムに通える今がシアワセなことは確か。

いまでも、時々腰痛はある。ヘンに集中力があるからか、ストレッチのやりすぎで痛みが出たりする。そんな時はすぐに休むか、トレーナーに相談する。年を取るっていいものだ。頼りになる若い人たちに甘えることができて、ありがたいなと思う。いい仕事をしてくれているのだから、結婚しても出産しても仕事を続けてほしいなあ。

完治したとは言えないが、50代になって身体が改善したのはこの上なくうれしい。普通は現状維持が精いっぱいで、老化の坂をできるだけゆっくり降りられればそれでオンの字だ。今は腰痛を完治させられるのではないかと希望をもっている。

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