腰痛物語②

腰痛を始めて感じたのは、大学を卒業して大学院へ進学してしばらくしたころだ。理系の大学院生は、忙しい。でも運動量は少ない。化学系の学生だったし、実験そのものよりも実験のための器具を準備する方が忙しかった。進学を勧めるのは、洗い物の人員を確保するためじゃないかと思ったほどだ。本当は大学院に行くほどの実力もなかったけど、実社会に出るのを遅らせるためだけに進学したのでやる気の出ないことこの上ない。それでも、とにかく忙しくしていたら、しばらくして腰が痛いのに気が付いた。体が痛いなんて、あんまりなかったからなんでだ、と同期に言ったら、「運動不足だろ」。

まあ、確かに。大学4年でマイカーを持っていたので、車で学校に行って、洗い物と食事に出かける以外は座りっぱなしだった。たまに息抜きにテニスコートでボールを追っかけることはあっても、そんなことほとんどない。納得したけど、結構つらかった。でも、よもやこの痛みとそののち30年以上も付き合うことになるとは思いもしなかった。

このころから、痛みは必ず右側。若かったから、痛いなあ、と感じても忙しいからしばらくしていると忘れる程度だった。落ちこぼれ学生の私は、ひたすら教えてもらった実験をくり返していたが、それをどうまとめるのか見当もつかない。今から思うともったいないことしたなあ、と思うけど、最後の方でちょこっと思いついて24時間通しの実験をやったら、担当教授が「これこそがサイエンスだ!」といたく喜んでいたのでそれを修士論文にして卒業した。周囲の先輩、後輩、同期たちは全然評価してなかったと思う。教授だけがヘンな思い付きを面白がってくれていた。

このころのどうしていいかわからない状態は本当につらくて、結婚してしばらくしてからも、大学院の2年になっても明日どこに行っていいかもわからない、という夢を時々見た。

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