赤い染料のコチニールに関する歴史。

洋服でもなんでも色違いで商品がそろっている。同じ製品でも赤いもの青いものなど、今では当たり前に手に入る。

この本の主題は、赤い色を生産するコチニールという昆虫の獲得を巡る、ヨーロッパ諸国の歴史だ。大航海時代といえば、南アメリカからの銀、スパイスなどが思い浮かぶが、赤い色を求めてこんなにも様々な人々が狂奔していたのかと驚く。コチニールだけでなく、ヨーロッパでは手に入らない様々な物資を手に入れることは国をあげての大問題だった。

コチニールの発見にまつわるおもしろいエピソードも盛りだくさん。顕微鏡のない時代、そもそもコチニールが虫なのか、植物のタネなのか、そんなことですら大論争のタネになっていたりして科学の発展の歴史も垣間見える。虫のタネだ、なんていう今ではこじつけとしか思えないことを大真面目に主張する学者もいたほど。当たり前だということ当たり前じゃない時代もあったんだなあ、と今更ながら実感した。地球は丸い、といっただけで教会に殺される時代。

コチニールの獲得は、同時にスペインの南アメリカでの植民地の歴史とも重なる。南アメリカの各地がどのようにスペインに征服されていったのか、コチニールを例としてなんとなくイメージする。

日本は島国で植民地などにされなくて、本当によかった。この本で読む限り、当時のヨーロッパ人は自分たち以外の人々が人間だとは思っていなかったとしか思えない。…同国人でも、身分が違ったら人間として扱っていなかったかも。

世界中を夢中にさせてきた、そんなコチニールも化学染料の開発によって重要度が揺らぎ始める。この化学染料の発展についてもさらにおもしろいエピソードが記されていて、分厚い書物が飽きることなく読めた。さらに、革命などの大きな社会のできごとによって人々が赤に対してどのようにイメージを変えていったのかも述べている。世間で常識だと主張されていることが結構あっけなく変わっていくものなんだ。赤が大変貴重だった時代は、貴族や高位の聖職者しか身に着けられなかったため、高貴な色とされてきたものが時代が変わるとふしだらな身分の低い女性のイメージになったり。

今では身の回りの何もかもが無数の色であふれかえっている。赤く染色する技術がどう進化していったのかも面白く読めた。

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