ライムライト

監督・主演 チャーリー・チャップリン

脚を痛め、自殺を図ったバレリーナを助ける落ち目の喜劇役者カルヴェロ。彼女を励まし、立ち直らせ、彼女もカルヴェロを愛するようになるが…。

よくあるオジサンの夢

チャップリンがメガホンを取った最後の作品として有名。また、彼が素顔で出ていることも話題になった。その他にも、この映画のプレミアのためイギリスに向かう最中にアメリカ合衆国から国外追放令を出されたりと、いろいろな背景がある。

チャップリンの喜劇は50代の自分でさえ、面白さがよくわからない。無駄に動きが大げさ。サイレント映画の化粧も好きじゃない。この映画はすでにトーキーだが、カルヴェロの全盛期の演技を表現する際にチャップリンの演技としてよく見かけた動きがたくさん出てくる。

好みじゃない映画のはずなのに、目が離せない。バレリーナ役のクレア・ブルームが美しいのもあるが、素顔のチャップリンがとってもハンサムだ。当時60代で髪も真っ白だが顔つきがとても魅力的。きっとモテるんだろうなーと思ってググってみたら、その通りだった。

イケメンのおじさんと美女

少し前なら、老喜劇役者の純愛として素直に感動していたと思う。でも、このパターン、男女を逆にしたら、どうだろう。

盛りを過ぎた老女優が、自分のアパートに若くてハンサムな駆け出しのダンサーを匿ったら?

老女優は嘲笑の的になったに違いない。美しい物語は作られない(と思う)。どうして男性の喜劇役者なら、若いバレリーナを自分のアパートに入れても純愛になるのに、逆はダメなのだ?

最近よく見る昔の刑事ドラマも、医療ドラマも、ジェンダーの観点から見るとツッコみたくなる要素が満載だ。いっつも、女は若くてきれいなのが正しく、適齢期(と言われる年齢)を過ぎても独身である女性は笑いの対象だ。そうじゃなければ、自分で自分を貶めて不幸になっている。

バレリーナのテリーが立ち直り、帝国劇場で主役を務めるようになる。歩くのも容易でなかった彼女が、優雅に歩く。端役として同じ舞台に立つカルヴェロの腕にそっと寄り添いながら…。

これがおっさんたちの夢なんだな。どんなに年をとっても、落ちぶれても、常に若い女にそばにいてほしい(しかも、とびきりの美女)。これが男女逆だったら、老女優の方は金にモノをいわせ、若いツバメ(古っ)は金目当てにオバサンのご機嫌を取っている、という設定になって、決して純愛物語は作られないと思う。偏見かな。

まあ、映画は見る人の夢をかなえてあげるものだ。みる方の総意の上に出来上がっている。そういうものだ。自分はその範疇に入ってないだけ。

歌も踊りも…

そんなことは別にして、チャップリンの歌と踊りは楽しめる。爆笑できるか、と言われると全然そうでもないけど。濃い化粧、デフォルメされた動き、内容のよくわからない歌、などなど、昔はこれで笑いを取っていたのだろう。蚤の曲芸とか、イワシになりたいとか、よくわからないのに、引き込まれ、見つめてしまう。笑いは湧きあがらないが、なんだかおもしろいとは思う。蚤の曲芸と言って、見せているのはチャップリンの目の動きだ。まるで落語のよう。チャップリンの動きで蚤が宙返りをしているのが見える。落語家が蕎麦をすすっているのを見て、そこに蕎麦が見えるのと似ている。笑いと言うよりは顔芸かな。

笑えるのはむしろ後半で出てきたバスター・キートンのほう。表情を見ただけで笑える。当時はチャップリンの方が大スターだけど。

カルヴェロの夢の中で、テリーと共演する。昔の映画はセリフが難解。でも面白い。動きが優雅。どうしてそういう展開になるのだ、とセリフの内容を疑問に思ってしまうが…。理解力が足りない…。でも、テリーを勇気づけるための言葉が、ひとつひとつ素敵だった。チャップリン自身もこうして難しい事柄を克服していったのかな、と思う。

自ら身を引く潔さ

命の恩人であるカルヴェロを深く愛するようになるテリーだが、カルヴェロは自身の仕事がうまくいかず、そのことを素直に喜べない。さらにテリーを愛する若者がいることがわかってしまう。

チャップリンの2度目の妻の次男

若い音楽の役で出てきたのは、名前からも分かる通り、チャップリンの息子。お父さんにはあんまり似てないけど。

若い二人を見て、カルヴェロはテリーのまえから姿を消すのだが、むしろ解放感があったんじゃないかなあ。その後、街の音楽仲間と結構楽しそうに居酒屋で稼いでいたりするし。テリーがカルヴェロを見捨てないことは分かっていたけど、どう見ても二人が結婚するのは無理がある。

純愛映画を作っている一方、

私生活では2番目の奥さんから離婚訴訟を起こされていたり、子供もたくさんいて、大スターだけにいろいろな問題も抱えていたらしい。そんな中でも次々に名作を世に出す。音楽も自分で作っている。

チャップリンの映画を全く理解してないが、この映画は最後まで見続けてしまった。音楽とセリフが美しく、俳優たちの動きがきれい。単にダンスの技術が高いというだけでない。これを機に他の作品も見たくなった。初めに単なるオジサンたちの夢だろう、などと思ったのは、自分自身のよこしまな性格を表すものだなあ、とつくづく思い知る。

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