エリザベス ゴールデン・エイジ

16世紀のイングランド女王、エリザベス1世を描いたケイト・ブランシェット主演の続編。前作は、エリザベス誕生から女王になるまで。こちらはエリザベス統治下で起こるカトリックとプロテスタントの対立を巡り、スコットランド女王メアリ・スチュアートとの確執とスペインとの戦争を描く。

前作の「エリザベス」は、アメリカテキサス州の映画館で観た。1999年の終わりごろ。当然日本語字幕はなく、英語のみ。それでも猛烈におもしろかった。宗教戦争のことが全く分からなくて、どういうわけでこっちの貴族とあっちの貴族が同国人なのにいがみ合っているのかがわからなかったが、なにしろケイト・ブランシェットが素晴らしい。なんと、あれから20年たっている。

こちらの製作は2007年なので、これも10年以上前のものだ。実際、封切られてしばらくしてから見ている。

エリザベス1世の治世下でイングランドは黄金時代を迎えたと言われている。スペインの無敵艦隊を破り、宗教問題を鎮静化し、平和が訪れた。当時スペインは世界中に植民地を持ち、日の沈まない国として強大な権力を誇っていた。そのスペインの艦隊を打ち破ったのだから、ヨーロッパの弱小国とみなされていたイングランドの地位がぐっと上がった潮目だったのかもしれない。

歴史にそう興味がなかったら、1作目の「エリザベス」の方が断然面白い。幼少期のころ実の母が父親に首をはねられるという悲劇に遭い、そのために王女様から庶子扱いにされ、宗教が違うために腹違いの姉が女王になると自分もいつ首をはねられるかわからないという境遇。そんなきわどい状況の中でも恋をする。豪華絢爛な衣装も見ごたえあるし、ヨーロッパのお城の中もとっても面白い。恋は当然成就することはなく、有名な「私はイングランドと結婚します」という言葉で女王となる覚悟を決めたところで終わった。

それと比べるとこちらはエリザベスが女王となったにも関わらず、なにやら悶々と悩み、女王のくせに思い通りにならない男におどおどと繰り言を言ったりして、みっともない。周囲の圧力に負けて(映画ではそういう演出)スコットランド女王メアリの斬首刑にサインしたりする。サインしたのに、いざ、刑の執行では怯えていてもたってもいられない。

そう、イングランドに黄金期をもたらした最初の女王も、普通の感覚をもつ女性なのだ。人なんか、殺したくないし、殺されるのも怖い。生きていれば、いくつになっても好きな男性はできる。それでも、自分の一挙手一投足が国の運命を左右する。戦争なんか、したくないのにするとなれば自ら鎧に身を固めて兵士の前に現れる。「私はあなた方とともにいよう」と馬上で宣言する姿にしびれない人はいない。兵士だったら、この方のために死ねる!と思ったことだろう。

最近、フランスに行ったので、嫌でも教会や宗教画に接することが多くなる。ヨーロッパでキリスト教は人々の生活の根幹だった。カトリックとプロテスタントの戦いは熾烈だ。専門的に勉強したわけでもないからどこまで行っても理解できないけれど、たくさんの戦争が宗教がらみだ。宗教と見せかけてやっぱりカネじゃないかなとは思うけど。

同じ映画でも、時間がたってから見てみると、その時々の自分の興味や経験によって面白さがぐっと深まる。この映画はそういう体験ができてとてもおもしろかった。

ケイト・ブランシェットは素晴らしい。悩んでいてもなんだか気品があるし、みっともなく男性に縋りつくところも彼女がしてるとみっともなくない。なんでかなあ。何をしていてもずっこけて見えるだろう自分と比べる気もないけれど、ただ単に美人だからというわけでもないよねえ。だって、彼女はいわゆる美人とは違うもの。女王として飾り立てているエリザベスより、鬘も化粧も衣装もなくしてただ立っているのが本当に美しかった。細身の女性が国を背負うってどういうことなのか。

でもですね。私のエリザベス1世のイメージは、ケイト・ブランシェット演じる知的でクールな女性ではないのですよ。幼いころに女王の母を王である父に殺されたような人が、普通の感覚でいるはずがないと思う。周りの状況がどんどん変わり、王女様にされたり妾腹と非難されたり、女王となっても、いつこの地位がひっくり返るか、わからないと冷めた目で周囲を見ていたのではないだろうか。結婚相手を決めず、何事も何となく流れるにまかせていくうちに、たまたまいい方向に向かったというだけなんじゃないだろうか…

まあ、映画なんで。ドラマチックな方がいいわけで。16世紀の雰囲気を味わいつつ、歴史の勉強にもなるという映画でした。

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