ネットフリックスオリジナル作品

カナダで実際に起こった殺人事件をベースに書かれた小説が原作。若く美しい下働きの少女は、本当に同じ家で働く男とともに雇い主とその愛人を殺害したのか?

疑惑の主人公グレイスは殺人罪に問われ、すでに何年もの間刑に服している。共犯者とされたマクダーモットは、「グレイスにそそのかされた。すべてあの女のせいだ」と言い残し、すでに絞首刑を執行されている。グレイス自身は殺人事件の詳細を記憶していない、と証言した。いったいそれは本当の事なのか?

グレイスを釈放するために、再度調査するためアメリカ合衆国からジョーダン医師が招へいされる。刑務所の所長夫人の好意で、グレイスは限られた時間ではあるが刑務所から出され、所長夫人の邸宅で家事手伝いをしている。その時間を利用してジョーダン医師はグレイスにインタビューを行う。

インタビューは、グレイスが遠いアイルランドからカナダへ渡った幼少期に遡って語られる。

ほんの150年ほど前、女性には人権など認められていなかった。社会的な地位が何もない女性たちは、お金持ちの家で下働きをして糊口をしのぐしか生きるすべはなかった。

グレイスが本当に殺人を犯したのか?マクダーモットとハンカチのあっちの端とこっちの端を片方ずつ持ってぐーっと引っ張ってナンシーの首を絞めたのか?

そんなこと、どうだっていいのではないだろうか。グレイスの過酷な生い立ち、下働きに従事する人々への差別。どんなにそれが理不尽なものか、この物語で語られることが本当にあったとしたら、何を行ったって、仕方がないと思う。身分の差別に加え、女性には女性であるだけで理不尽な仕打ちに晒されなければならない。それが死に直結することだってある。

グレイスがここに描かれるように賢い人であったなら、マクダーモットに殺人をそそのかしてもおかしくないと思う。仲良しの友達がうっかり男の甘言を信じて身を任せた結果、死んでしまったことを目の前で見て、簡単に男の言うままになったとは思えない。けれども同時に、女性にだって男性を求める気持ちはあるに決まっている。愛されて、安定した生活を送りたい。そのためならなんだってできる。

グレイスがインタビューを受けながらも、ジョーダン医師を観察している様子がちょっと怖い。でもある程度年を越えたら、こうして男の人を見通してしまう女の人は多いんじゃないだろうか。男性は思い付きをすぐに行動に移す。けれども後片付けのことは一切考えない。下心が見え見えなのにそれが分からない。いろいろ理屈はつけるけど、やりたいことは一つだけ…。いやいや、イマドキは若い女性だってそんなこと、とっくにお見通しなのかもしれないが。

グレイスが有罪なのか、無実なのかという謎について考えさせると同時に、ほんの150年ほど前まで実際にあった労働者階級への理不尽な差別、女性への暴力などの描写が見るのがつらくなるくらいリアルだ。それなのに、主人公はじめ登場する俳優たちの美しさやカナダの自然に囲まれたお屋敷がとっても素敵。こんなきれいな家の中で、当主の坊ちゃんはメイドに手を出したり、してたのか…しかも妊娠したらそれだけで追い出すのか…。妊娠の原因は他ならぬ坊ちゃんなのに。

まえから不思議だったんだけど、セクハラしたやつらの言い訳に決まって「女のせいだ」というものがある。こっちが触りたくなるような服を着ているからだ、とか、人気のない道を一人で歩くのが悪い、とか。ここでは、なんと、殺人でさえも女が唆したからだ、ということが問題になっている。

唆されたって、実行したのはアンタだろ。

まあ確かに、男はそばで女が見ていると張り切っちゃうものらしい。ここではついに捕まってしまってからの、最後のあがきで女の方も道連れに、ということなんだろう。

私は、この女性は殺人になど加担してはいないと思う。だいたい男の人の方が勝手に盛り上がって、どんどん実行して、女性はそれに付き合わされる、というのが多いんじゃないだろうか。私だけかな。でも周りを見ても、ご主人が突然脱サラするぞ!と言って事業を立ち上げて奥さんがあたふたするとか、そこまでの事じゃなくても急に旅行に行こう!とか言って荷造りや家の片付けなんかに追われるのは奥さんの方、とかありがちだ。グレイスは積極的に殺人を止めることはできなかったと思う。だって、盛り上がった時の男の勢いに勝てるものはそうないから。そういうパワーがいい方に向けばいいんだけど、そうとは限らない。

圧巻は、最後の降霊術会のシーンだ。催眠術をかけられ、深い眠りに入ったグレイスはジョーダン医師に対してそれまでの態度とは打って変わった様子になる。

これがグレイスの本性なのか?

というよりも、ジョーダンの本性を見ている方はとっくの昔にわかっちゃって、こちらの本音をジョーダンにぶつけている気になっていっそ気持ちがいい。

ストーリも大変興味深いが、俳優さんたちの演技力も素晴らしく、イッキ見してしまう作品だった。

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